「このデザイン、見やすいね」と言われることはあっても、
「この文字サイズ、私にちょうどいい」と言われることはなかなかありません。
それほど、文字サイズというのは“無意識に快・不快を左右する”要素です。
読みやすさは単なる技術的な問題ではなく、ターゲットを理解することから始まります。
年齢、目的、使用デバイス、そして情報への期待値。
これらを丁寧に読み解くことで、初めて“伝わる文字サイズ”が見えてきます。
シニア向けデザイン:大きな文字とコントラスト
シニア向けの印刷物やウェブサイトを手掛ける際、まず意識したいのは「視認性」と「疲れにくさ」です。
▶ 視力変化への配慮
老眼によるピントの合いづらさや、コントラスト識別力の低下は一般的です。
そのため、文字サイズは12pt以上、できれば14〜16pt程度が安心。
Webでは16px以上がベースとして、18px程度が推奨されます。
▶ コントラストの確保
淡いグレー文字や背景に馴染む色は避け、
白背景 × 濃いグレー or 黒文字が最も読みやすい組み合わせ。
アクセントカラーも原色よりややトーンを落とすことで、眩しさを抑えられます。
▶ 行間と余白のバランス
行間を詰めすぎると読みづらくなります。
行間は文字サイズの1.5倍前後を目安に設定しましょう。
また、段落間にしっかりと余白を設けることで、内容の区切りが自然に伝わります。
シニア向けデザインのキーワードは「ゆったり・明快・安心感」

若者向けデザイン:余白とリズム
一方で、若年層(10〜30代)をターゲットにしたデザインでは、
必ずしも文字を大きくする必要はありません。
むしろ、「余白」や「情報の密度感」が印象を左右します。
▶ 文字サイズよりも“視線のテンポ”を意識
SNSやスマホでの情報接触に慣れた世代は、
「読む」よりも「流し見る」ことが中心です。
そのため、文字の大きさよりも配置・リズム・余白のとり方が重要。
大きな見出しと小さな本文のコントラストをつけ、
余白を大胆にとることで視線誘導を設計します。
▶ フォント選びは“軽やかさ”を意識
シニア向けが丸ゴシック系で温かみを出すなら、
若者向けはサンセリフ(ゴシック体)でミニマルに。
やや細めのフォントを使い、空気感のあるデザインに仕上げると良いでしょう。
▶ 情報量のコントロール
若年層は「興味の持てない情報」はすぐ離脱します。
文章を短く区切り、見出しやアイコンでテンポを出すこと。
余白そのものが“休符”のような効果を持つのです。
若者向けデザインのキーワードは「スピード・軽さ・抜け感」

共通する考え方
デザイナーがしばしば陥るのが、「可読性=文字を大きくすればいい」という誤解です。
しかし、可読性(読みやすさ)と快読性(気持ちよく読めること)は別の概念です。
可読性
文字や文章がどれだけ「読みやすいか」という性質。
文字サイズやコントラストによって、単なる「見やすさ」ではなく、
読者が内容を理解しやすく、情報を自然に受け取れるようにするための設計です。

快読性
リズム・行間・余白・デザイン構造などによって、気持ちよく読める性質のこと。
たとえば、
若者向けのファッションブランドが16pxの文字をびっしり詰めていたら“重く”感じます。
逆にシニア向けの医療系パンフレットで、12pxの細字が並んでいたら「読みづらくて不安」になります。

文字サイズを決める前に考えるべき3つの質問
① 誰が読むのか?
→ 年齢層・利用環境(スマホ/PC/紙)を具体的に設定する。
② どんな気持ちで読ませたいのか?
→ 信頼・安心・ワクワク・軽快など、感情を設計する。
③ どこで読まれるのか?
→ 病院の待合室・電車内・SNSフィードなど、状況を考えましょう。
この3つを明確にしてから文字サイズを設定すれば、
読みやすさとブランディングを両立するデザインが可能になります。

実例
人工木建材 販売・施工会社様 商品カタログ(パンフレット)

まとめ
フォントや文字サイズ、余白の設計は、
単なる“読みやすさ調整”ではなく、伝え方そのものです。
・シニア向けには「やさしく包む」ような大きさと間隔を。
・若者向けには「テンポと軽やかさ」を生む余白を。
そして、どのターゲットにおいても共通して言えるのは、
“文字もデザインの一部として語らせる”ことの重要性です。
「誰に伝えるのか」を起点に、
その人にとって最も快適なリズムと温度を持った文字を選ぶ。
それこそが、デザインの本質といえるでしょう。
その文字は、誰が為に。

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